冬になるといつもより腹が減ると思う。
寒さに抵抗して体がせっせと熱を作ろうとするからだ。
冬の間は炭水化物と脂質多めな食事がいいとされるくらいには、体が食事から得るエネルギーは大きい。
冬の鍋もまたよろしい。
火を使っての調理も苦じゃないし、寧ろ大歓迎だ。
子猫の額の様な1Kの私の部屋は、料理するだけでなんとなく温もるからだ。
バイト中、住宅街でふと香るバターと小麦粉の良い匂いに、今日はシチューかはたまたグラタンか。
バイトをしていても頭の中はお昼ご飯の事でいっぱいだ。
生活習慣病へのせめてもの抵抗として、ご飯は最近玄米ご飯にしているが、これも美味しい。
たくさん作ってしまってもペロリと食べられてしまうのが恐ろしいような。
今日のご飯は餃子にしようと思って、初めての八百屋へ行った。
競い合うように建つ大きなスーパー二軒にぎゅうぎゅう挟まれた小さな店。
奥には年季の入ったやけに細身の招き猫と、小さなおばあちゃん、ではなく、マダムが一人。
そこそこの交通量を湛えた片側1車線にへばりついた歩道と、そこに昔ゆかしい八百屋の間口が広げられている。
アンバランスで、ともすれば汚いとも見えるけれど、覗いてみれば中々の品揃え。
せせこましく並べられた商品を見ていたら、暇を持て余していたらしいマダムに話しかけられた。
自分でご飯をつくるの?
外で買うお弁当はしょっぱいし油が多いからね。毎日ご飯をつくってるのよ私も。
疲れてる時なんかにはお鍋とかちょうど良いわよ。
私の相槌を合いの手にマダムは喋り続け、最終的に息子達の話に着地した。
久々の人間との会話は私の声帯に非常に優しいものとなった。
話によると、マダムの息子達は彼女自慢の大食らいのようだ。
小さな頃からマダムの手料理の味と豊富な品数で肥えた舌には、今も苦労させられているらしい。
今も昼と夜をそれぞれ4人前と5人前作っているそうだ。
困ったわあ、と言いながら満更でも無さそうですね、マダム。
可愛くて思わず笑ってしまった。
元気なのはよろしい事だ。
ずっとそのままでいてほしい。
餃子のためにまず韮を買った。
安かったからみかんも買った。
久々に自分でバナナ以外の果物を買ったな、そういえば。
キャベツは既に一玉入手済み。
これを半玉ぶちこむのが拙宅流なのだ。
餃子は作り置きがきく上、茹でてポン酢をかければもう一品できてしまうとはマダムの談だ。
そうですよね、餃子は沢山作るに限りますよね。
特に寒い日が続く今の季節は。
暖かい部屋でアツアツの羽付き餃子とハイボール。
いくらだって入るというもの。
ああ、明日がバイトでなければなあ。
120枚の餃子の皮、今回は何食分になるだろうか。
今度は苦笑いが出そうになった。
マダムの店は韮も人参もみかんも小松菜も両隣のスーパーより断然安かった。
以後、お世話になります。マダム。
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