シラフで渡れる世でもなし

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やっちまった、と思う事は、こと私の人生においては他人のそれより数倍多いと思っているのだが、そんな数々の失敗や罪悪感や羞恥心や、その他自傷的な諸々の自意識を消し去る方法を大人になって知った。

酒である。

多少のこだわりはあれど、私は基本的にアルコール全般を愛してやまない。

最初の一口で多幸感が押し寄せ、そのうち訳もなく楽しくなってくる。

踊ったり歌ったりおしゃべりしたりしているうちに眠たくなってきて、気がつくと朝になっている。

その頃には、前日の体が痒くなる様な記憶や不快な感情はぼんやりとして、よし今日もやるか、と思えるようになっているのだ。

しかし最近、飲んだ日の次の朝に頻繁にこう思うようになった。

やっちまった、と。

二日酔いではない。

二日酔いの方がましではある。

独り酒を過ごしたのか、どうやら私はかなり酒に強くなってしまったようだ。

中々酔えないため量が増え、最近の検証では日本酒を一升飲んでからショートカクテルを3杯、プラス、ワインを2杯飲んでやっと潰れる事ができた。

それに伴い、自分自身ですら知らなかった数々の悪癖が顔を覗かせるようになったのである。

飲み屋で知らない人と話し込んだり、先輩にキンタ枕(金玉を枕にすること)をさせるのは序の口。

目が覚めたら知らない部屋で前日一緒に飲んでいた友人を抱き抱えていたなんて事もあった。

そんな事があっても尚一緒に飲んでくれる友人には感謝するしかない。

直近では、へべれけにも関わらず自分の髪を切ったので、いつも自前で拵えるツーブロックが虎刈になっていた上、前髪が片方だけ短くなっていた。

リカバリー不可能なハゲはできていなかったのがせめてもの救いである。

その上、どうやら私は酔うとめちゃくちゃに食べる、もとい、食べた先から食べた事実を忘れるようだ。

家の酒を飲み尽くして外に飲みに出たある日は、合計3回スパゲッティを食べていた。

家でつまみに一回、バーで一回、帰り道のコンビニで一回。

どうりで朝お腹いっぱいなわけだ。

そんなこんなで、これはいかんと思ったのが今朝の話である。

いつも通り、脱水のせいでか痙攣する食道と胃に1Lほど水をぶちこみながら反省した。

もう酒は飲みません、いえ、過ごしません、と。

私が酒を絶てるとは思わない。

もう良い大人なので、私は私の自制心の無さをしっかり把握しているのだ。

しかし一体どうやって酒の量や頻度を制御すればいいのだろうか。

そこで思いついたのが”積徳つんどく式酒量制限“である。

良い事や、自分を律する事ができたら1ポイント獲得。10ポイント貯まったら酒を飲んでも良しとする、というものだ。

詰まるところ、徳を積んでおいしくお酒を飲もう、という事である。

これなら嫌いな片付けや掃除や洗濯を率先して行えるし、他人に優しくなれるし、お酒も美味しくなるし、良い事づくめだ。

自慢ではないが私は困っている人に行き合う事が結構多い。

10ポイントが貯まるのもそう遠い事ではないだろう。

美味しい酒を飲みたいがための善行なので、いささか打算的過ぎる気もするが、まあいいだろう。

やらない善よりやる偽善だ、とハガレンでも言ってたし。

とりあえず今日は家のそこかしこに転がる酒瓶を片付けることにしようか。

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